アフリカまとめ

アフリカニュース、アフリカ経済、アフリカ政治、アフリカ文化、海外ビジネス、開発経済、国際政治などについて記事を書いています。不完全な記事も多く個人的スクラップのようなものが多いですが何かの役に立てば幸いです。

ビジネス

海外直接投資(FDI)

I.  定義                          

国境を超える投資のうち、企業が海外に支店や子会社を設置したり、海外企業の経営権の支配・関与を目的として出資をするもの。

IMFは「居住者による、非居住者企業(子会社・関連企業・支店)に対する永続的権益の取得を目的とする国際投資」と定義している。
統計的には、総株数の10%以上の出資は経営に関与することを目的とするとみなされ直接投資として計上され、10%以下のものは配当や投機を目的とするとみなされ対外ポートフォリオ株式投資に分類される。(坂東, 2004)

II. 歴史                           


i) 初期グローバリゼーション

1840年のアヘン戦争を起点としてヨーロッパ先進国によるインフラ投資・資源開発投資が途上地域へ流れ込みはじめた時期。
この時期の海外直接投資は先進国から途上国、製造業よりも資源開発で、英国・米国のアングロサクソン系国家が全体の6割を占めていた。加えてこの時期の貿易ルールは自由貿易が原則で、人の移動も原則自由だった。例えば日本の開国の際も日本に不利な自由貿易原則が通されたし、外国人の国内移動も後に自由になった。

【1914年の海外直接投資の様子】(大石(2012)で引用されたJones(2005)を参考)
・累積海外直接投資:イギリス(45%)、アメリカ(14%)、ドイツ(14%)、フランス(11%)、オランダ(5%)
・累積海外直接投資受入れ:ラテンアメリカ(33%)、アジア〔主に中国〕(22%)、東ヨーロッパ(10%)、アフリカ(6%)
・産業分野別累積:天然資源(55%)、製造業(15%)、サービス〔公共事業含む〕(30%)

ii) 戦間期ブロック経済

第一次世界大戦をきっかけとして初期グローバリゼーションの流れは打ち切られる。第一次大戦の勃発による国籍識別の必要性から人の自由が制限され、その後の世界恐慌をきっかけとした金本位制の停止により資金のの出入りも厳格に管理されるようになった。加えて英仏米などはブロック経済を形成して保護主義的貿易政策をとり新興の工業国(日・独・伊など)は市場から締め出された。
この時期には外国企業は国有化されるか、資本と経営の現地化を余儀なくされ政治だけでなく経済の分野においても国家主義が支配的になっていった。

iii) 国民経済期


二次大戦後はパックスアフリカーナの元、GATT・世界銀行・IMFなどの国際体制が整備され国際貿易は再び活性化した。しかし、アメリカ以外は各国とも大戦からの復興に力を入れざるを得ず、自国産業の育成に政策の力点が置かれ国家による経済の管理が行われた。
またこの時期の海外直接投資は先進諸国間で、主に製造業・サービス業の分野で行われていたことであり、初期グローバリゼーションの時のものとは質の異なるモノであった。

iv) 第二次グローバリゼーション

インターネットの普及による情報伝達の飛躍的な効率化、WTOを軸とした自由貿易主義の拡大などの影響で再び世界はグローバリゼーションの時代に突入した。
実際、海外直接投資は先進国から途上国へ、資源・エネルギー分野への流れが成長しており、第一次グローバリゼーションと相似している。また、近年では途上国企業による途上国への投資もまた増加している。

以上、大石(2012)より


III. 理論                                    
雁行形態論
OLIバラダイム
シグナリング理論
など


<参考>
多国籍企業学会(2012)『多国籍企業と新興国市場』大石芳裕・桑名義晴・田端昌平・安室憲一監修 文眞堂
坂東達郎(2004)「海外直接投資」渡辺利夫・佐々木郷里編『開発経済学事典』弘文堂

中国の対アフリカ投資の実際

中国によるアフリカ投資(海外直接投資〔FDI〕)は世界から注目を集めていますが、元世銀研究員の中国人の申氏 [Shen (2015)] はその実際の動態について調査を行いました。


I. 中国本国の統計に基づく知見                                
【投資案件数の推移】
中国民間企業のアフリカへの投資は急拡大しており、投資案件数は2005年の52件から2013年には1217件まで増えた。中国企業の対アフリカ投資案件の53%は民間によるものである。
【産業分野別傾向】
民間企業は製造業・サービス業に投資する傾向にあり、国有企業は建設業・鉱業に多く投資してきた。
【中国国内の地域傾向】
地域別でみると、製造業をリードする本国沿岸地域の企業による対アフリカ投資が最も大きい割合を占める。
【アフリカ大陸内での地域傾向】
中国企業の対アフリカ投資はサブサハラアフリカに広く行き渡っているが、ナイジェリア・南アフリカザンビア・エチオピア・ガーナの上位5か国で全体の案件数の40%を占める。
【中国の統計データの評価】
中国の専門家は統計当局の役人も含め、中国の投資統計データは民間による中小規模の投資の数を把握できていないと考えている。

II. 投資受け入れ国の統計に基づく知見                      
【投資案件数の推移】
被投資国(ナイジェリア・ザンビア・エチオピア・ガーナ・リベリア・ルワンダ)の統計データに基づいた場合、中国企業による投資案件数は中国側のデータに比べて数倍の案件数がある。
【産業分野別傾向】
中国企業による投資案件は主に労働集約的な製造業に集中(44%)しており、その後に小売・流通等のサービス業や鉱業が続いている。
【各国内における中国資本の位置】
エチオピアやザンビアなど中国からの投資が対内海外投資全体で大きな割合を占めるものもあれば、リベリアやルワンダやガーナでは低い水準に留まっている場合もある。
【進出中国企業の規模と競合相手】
アフリカに進出する中国企業は小規模な中国資本の企業であることが多く、主に同様の南アフリカやインドといった新興国から進出した小規模な企業と競争する。
【中国資本の国内開発への寄与】
2012年のアンケート調査によれば、中国からの投資はその雇用創出によって総じて肯定的にとらえられている。しかし、国内の産業化の観点からは否定的な意見も多数あった。


III. 企業への聞き取り調査に基づく知見                         
【投資動機】
製造業企業にとっての投資動機は①アフリカの国内市場とその先に潜在的に広がる輸出市場へのアクセス、②特に低賃金労働力による生産コストの低さ③原材料へのアクセスである。
【投資リスク】
インフラ整備が不十分であったり治安・政情の不安定な国では操業コストが高い。
【産業・投資政策への反応】
輸入代替工業化政策はある程度は成功を収めたといえる。輸入規制に対応して本国からアフリカに工場を移した企業もあった。
また、被投資国の投資環境の違いは中国企業の投資国選択に影響を与えた。
【本国の政策への反応】
本国と被投資国の両政府による投資促進政策はある程度役に立っていたが、現地の既存ビジネスを通した口コミ的な生の情報が最も重要な要素であった。
【その他】
・民間企業群によって自発的に形成された工業団地がプラットホームの役割を果たし、企業のコスト削減に役立っている。
・多くの民間企業はアフリカでの事業を「2回目の事業立ち上げ(二次創作)」として捉え、20年前に中国国内で行ったのと同じ、断固として勤勉に倹約する手法で事業を行っている。
・アフリカの中国企業は概して利益という点でこれまでの事業経過に満足している。

IV. 結論                                                                       
【新植民地論への反応】
2012年8月当時の米国国務長官だったヒラリー・クリントン氏は中国によるアフリカへの投資を「新植民地主義」であるとして批判したが、これは正しくない。
被投資国は雇用創出等の恩恵を得ており当局関係者もこれを好意的にとらえている。ただし技術移転や現地企業との協働等の長期的産業育成効果を期待できる要素は依然として弱いことも認められ、投資受け入れ国による政策努力により双方良し(Win-Win)の関係が築かれることが望まれる。
【中国企業進出の理論付けと政策提案】
中国企業の進出は、赤松氏が提唱した雁行形態論に従って中国企業が次の発展段階に移行していることを示すものであり、アフリカ諸国は低賃金労働力等の後発国の優位を十分に生かし、中国自身が20年前に享受したような発展を達成することができる。同時に中国企業はWells氏の言う第三世界多国籍企業の優位をもって有利に進出することができている。しかし、中国企業は依然としてアフリカ諸国に対してインフラの不備や不安定な政治等の不安を抱いており受け入れ国政府はこれらを払しょくする必要がある。また、口コミによる投資誘引効果が大きいことも今回の研究でわかったので、受け入れ国政府は既存の進出企業に対する行き届いた対応をすることで投資を引き付けることが出来るだろう。


<参考>
Shen, Xiaofang. “Private Chinese Investment in Africa: Myths and Realities.” Development Policy Review 33, no. 1 (2015): 83–106.

リベリアの便宜船籍

_DSC4085_-2_-3_tonemappedリベリアには便宜船籍が多く、平野(2011)によればその理由は以下の引用文だそうです。






”リベリアは船舶に対する税金を優遇しており、外国船が便宜上船籍をリベリアにおくことが多い。海難事故を伝えるニュースなどで、やたら「リベリア船籍」の船が多いのはこのためで、海運業が発展しているわけではない。この船舶登録による収入が国家財政に占めるウエイトは大きく、貴重な収入源になっている。”(平野, 2011: pp191)

<参考>
平野克己監修(2011) 『日本人が知っておきたいアフリカ53か国のすべて』 レッカ社

日本アフリカ関係②:貿易

日本の対アフリカ貿易に関して、岡田(2007)の整理を通して学んでみましょう。

I. 時代別の量的な特徴                           file3021258241702
  i) 1960年代以前
    a) 輸出
日本の輸出はまだ主に繊維製品を中心とする軽工業品が大きな割合を占め、総輸出額の17.5%はアフリカに対する輸出で占められた。
    b) 輸入
言及なし、少量。

  ii) 1970年代から90年代
    a) 輸出
日本の対アフリカ輸出入ともに拡大したが、対先進国での貿易がそれを上回る速さで拡大したため総貿易額中のシャアでは減少を続けた。総額ベースで見ても80年代以降は急減している。
    b) 輸入
輸出ほぼ同様

  iii) 2000年以降
    a) 輸出
日本の対サブサハラ輸出拡大の中心は南アフリカで、90年代後半から2006年までほぼ半分を占めている。対南アフリカ輸出の52%は日系メーカーの輸出としての自動車・同部品、33%がインフラ投資の増加としての機械・電気機械である(2006)。南アフリカ以外のサブサハラアフリカへの輸出の69%は輸送用機械であるがその内3分の1以上がリベリアの便宜船籍のための輸出で、輸出全体から船舶輸出を除けば自動車・同部品の占める割合は57%となる。
    b) 輸入
90年代後半に南アフリカの民主化により同国との貿易が拡大し、2000年以降にはそのほかのサブサハラ諸国との貿易も急拡大する。南アフリカからの輸入は主に貴石・金属等の資源が多いが、南アフリカに生産拠点を持つドイツ自動車メーカーが日本への輸出を始めたことで2000年以降は自動車等の輸入が急拡大し15%を占めるに至った(2006年)。一方で、南アフリカ以外のサブサハラ諸国からの輸入の増加に関しては主に原油輸入の増加が原因である。

II. 評価                                    
世界的な資源獲得競争の中で日本の製造業のため原材料を確保するためにはサブサハラの資源は不可欠で、日本企業のグローバル化実現にはサブサハラ市場は避けて通れれない。そのため、日本とサブサハラの貿易関係は資源輸入と日本のお家芸たる自動車輸出の二つに集中している。


<参考>
岡田茂樹(2007)「日本とサブサハラ・アフリカの貿易・投資」『成長するアフリカ—日本と中国の視点 (会議報告)
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Download/Kidou/pdf/2007_03_03_5_okada_j.pdf

【熱気】NEC、ナイジェリアで生体認証事業を狙う

who what 5  NECのアフリカでの生体認証事業についてNHK記事とNECのサイトから紹介します。
 南アフリカでの事業についてはNECが成功事例として紹介しているものを参考にしていますのでかなり褒めちぎっておりますがあしからず。

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NECがナイジェリアで役所の住民システムへの生体認証システムの納入を目指している。
1億7000万人で世界7位の人口規模・豊富な原油資源を背景に年7%成長を続け、昨年には南アフリカを抜きGDP規模でアフリカ最大となったナイジェリアで貿易見本市が開かれ、日本企業30社を含む900社が出展した。
その中でNECは顔認証システムを実演し「空港のセキュリティに使える」などの好評を得た。

NECは既にナイジェリア首都ラゴスで指紋認証技術を使った住民登録システムの導入試験を行っている。
国民の多くが60%がいまだに1日1.25ドル以下で暮らしているナイジェリアにおいては効率的な行政システムを確立することも大きな課題の一つだ。このシステムによって個人の失業状況の追跡等が可能になるし、重複登録による年金不正受給などの不正も防ぐことができる。
NECはナイジェリアのすべての州でこのシステムを納入すると息巻く。

それ以外にもNECは世界の各地で生体認証ビジネスを展開しており、南アフリカ内務省では既に2001年から段階的に指紋認証による住民登録システムが導 入されており、それまで書類によって行われていた作業が省略し効率的な行政を実現している。このシステムによるIDが自動車の購入からレンタルビデオまで 南アフリカでは様々な場面で必要とされる。システムの維持管理のための地元の技術者や役人の教育を通して地元経済の潜在力強化にも貢献しているし、多様な人種が暮らし人種間の利害関係が複雑な南アフリカにおいて、このような一元的なシステムで国民を登録することは国民統合のための象徴的な意味を持っている。

参考

NHK World News (2014) "Eyeing the Opportunity in Nigeria" 2014/12/15.
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/worldupdate/20141215.html

NECウェブサイト 指認証システムの導入事例:南アフリカ内務省
http://www.nec.com/en/case/sa/

【達見】アフリカ市場の橋頭堡ルワンダ

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 日経ビジネスオンラインより、アフリカ進出拠点としてのルワンダの優位性に関し記事が出ていましたので紹介します(⌒-⌒)
 筆者の方は外資系コンサルティング出身で現在は主としてアフリカ進出に関するコンサルティングを行う会社の代表取締役をされている方で、駐日ルワンダ大使館・JETROの後援を受けルワンダビジネスセミナーを開催されています。
 ルワンダ一国のみならず、アフリカ全体に対する理解が進む必読の達見です。

▼ポイント要約▼
①試験マーケティングのための市場として最適
  ・東アフリカ共同体諸国、サブサハラアフリカ上部の国々と市場環境が相似している。
②地域統括拠点として最適
  ・帰還した離散民を通じた人脈構築が期待できる。
  ・4時間フライト圏内に1兆5千億ドル市場、陸上交通整備も進む。
  ・開放的なビジネス環境と安定した治安がある。

原文
堤夏七子 (2014) 「アフリカ市場の橋頭堡・ルワンダ~虐殺から20年 4時間フライト圏内に1兆5000億ドル市  ルワンダは東アフリカの縮図」 『日経ビジネスオンライン』 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141217/275291/

【朗報】資源の呪いの終わり?

20150110_MAC640経済雑誌The Economist の中東アフリカ欄にアフリカの経済成長に関する記事がありましたので簡単に内容を紹介させていただきます(^o^)
原題:African economic growth: The twilight of the resource curse?

右グラフは原文より。
 


▼ポイント要約▼


①アフリカ諸国は資源輸出国であり資源価格が経済を左右してきた。
②昨年は資源価格が急落した。
③一部の国では通貨安となったが経済への影響は過去に比べ小さいと見られている。
④その理由はアフリカの成長が資源産業だけでなく工業・サービス業へ波及してきていることであり、これは投資環境の改善に支えられている。


 

▼もう少し詳しく▼


①アフリカ大陸には多くの資源が眠っており、地球の全埋蔵量の3分の1の鉱物資源、10分の1の原油を占めると言われ、世界のダイヤモンド生産の3分の2を占める。アフリカの資源国は資源輸出をエンジンとして経済成長を目指してきていたため、自らの裁量でコントロールできない世界市場での資源価格の騰落に自国の経済が大きく影響されてきた。

例:19981999にかけての鉱物・原油価格の値崩れの際にはナイジェリア通貨ナイラが80%安となる。

 

②昨年(2014)には原油価格が半値まで値下がりし、銅や鉄鋼などの鉱物価格も急落したため、これまでと同様にアフリカ経済に悪影響があるかと思われた。

 

③今回は少なくとも10の国で通貨が10%以上安くなったが、致命的な影響を受けた国は見られなかった。ガーナは対ドルで26%安くなったが、ガーナは他の資源国と比べれば貿易の資源依存度は低く、資源安の影響というよりはGDP10%に及ぶ財政赤字の影響と考えるべきである。さらに世界銀行のWonks氏は情報通信・運輸・金融等の産業の貢献によって今年サハラ以南のアフリカ経済は5%成長すると推測している。

 

④資源安がアフリカ諸国の経済にこれまでほど大きな打撃を与えないと投資家や国際機関により考えられている理由は、経済の中で非資源産業の地位が向上してきて いることである。この非資源産業の成長は海外直接投資が下支えしているが、これは政府が自国の投資環境を整備していることにより呼び込まれている。世界銀 行の「ビジネス環境調査2013/2014」によればモーリシャスは投資環境ランキング28位で最適の部類に分類されているし、ルワンダはイタリアよりも投資環境がよいとされている。当然、絶対量としては資源国のほうが非資源国よりも投資を受けているのだが、対GDP比率で見積もると最近では非資源国のほうが多くの投資を受けている。また、資源大国でも非資源産業の重要性は増している。

例:アフリカ最大の経済大国であり原油が豊富なナイジェリアはこの35%成長を続けているが、最近は原油生産は停滞しており、この成長は携帯電話・建築・銀行などの産業によりもたらされている。今日ではGDP60%がサービス産業である。

 

原文

http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21638141-africas-growth-being-powered-things-other-commodities-twilight